芸術家の卵を見た。

ファミレスで、一心不乱に塗り絵に色を塗るガキがいました。
モノを食べる場所でモノを食べるよりも、とにかく色を塗っていました。
周りの家族は、それについて特に何か反応する事はありません。
きっと、それが日常茶飯事なのでしょう。
塗り絵の中身を見てみました。
何かのアニメのキャラクター(女子)のようでした。
キャラクターの髪を青く塗っていました。
まあ、アニメのキャラの髪の色が青い所で何の問題もありません。
そんな事は当たり前です。
しかし、それが顔、もしくは肌ならばどうでしょう。
顔が青。
もしかすると、映画アバターを見た後にこの場所へ食事にきたのかもしれません。
それが青ならばです。
しかし、青ではありません。
顔は紫色だったのです。
髪は青、顔は紫のアニメ系女子。
さすがにそんなキャラクターはいないんじゃないでしょうか。
しかし、それはおれの目の前に確かにいたのです。
そのガキが生み出した新たなキャラクターとして。
一見、ただのムチャな塗り方に見えるのですか、よーく見ているとこれはこれでアリなような気がしてきました。
美術館で解釈の難しい絵に出くわし、これが芸術というものなんだ、と諦めてしまうあの感覚に近いです。
ガキは自分の鞄から鉛筆削りを取り出しました。
ちょっとまった!と思いました。
その鉛筆削りは、削りくずがダイレクトに外に出てくるタイプです。
メシを食べる場所でそれを使ったらタイヘンだ!と思ったのです。
家族はいったい何してるんだ。
ガキは構わず色鉛筆を削り始めました。
家族は無反応。
削りくずがファミレスの床にこぼれ落ちてしまう!と思いきや、ガキは削りくずを直接自分の鞄に入れているじゃないですか。
そしてこちらの驚きはよそに、やはり家族は無反応。
こんな事までもこの家族にとっては日常茶飯事のようです。
おれは思いました。
そのエキセントリックな行動、そこまでしても色を塗りたいという情熱、色使いの奇抜さ、さらには家族の寛容さ、まさにこのガキは未来の芸術家なんじゃないかと。
うん、思ったんだよ。