カップヌー

ドルに小さくて、ぐるんと丸まった小さなエビが入ってるじゃないですか。
おれ、あれが嫌いなんです。
小学生の時、給食で、確か海藻サラダかなんかだったと思います。
そのサラダに、上のカップヌードルのやつと同じようなエビが入ってたわけです。
そして、まだ幼い頃のおれが、そのエビを口に含み前歯で噛みちぎった瞬間、吐き気を催したんです。
それ以来、おれはエビというもを何一つ食べずに今まで生きてきました。*1
しかし、エビは一般的にはゴチソウの一つに数えられ、確かに人々がそれを食べる姿はエビ嫌いなおれにもおいしそうに見えました。
だから、小さいエビは無理だとしても、エビフライくらいなら味も違ったりしていけるんじゃないかと、食べてみようと思ったことはありました。
しかし、結局食べることはできませんでした。
試みようとした時、おれはいつも近くの人にこう尋ねていました。
この大きなエビと小さいまん丸いエビの味は同じか否か。
すると、大概の答えはこうでした。
どっちもエビの味がするよ。
それじゃあダメだあああ、と思い、食べることができなかったのです。
そんな感じでおよそ20年間、おれはエビを口にすることはありませんでした。
しかし、そんなある日、というか今日、おれはどうしてもエビを食べないといけない状況に追い込まれました。
実は今日は法事だったんですが、その時にお店で振る舞われた懐石の一品目が伊勢エビだったんです。
懐石の一品目を一口も手を付けずに皿をどかすなんて、それはちょっとまずいんじゃないかと思ったんです。
参った、じゃあどうしよう、とりあえず少しだけ食べよう、ということにしました。
ちょっと食べてそのまま飲み込んでしまえばこの場はなんとかなる、そう思ったんです。
そんなわけで、およそ20年ぶりにエビなるものを口の中に入れました。
飲み込むには少々大きかったので、前歯で噛みちぎることにしました。
噛みちぎりました。
ん??
あれ??
ムシャムシャ、ゴクン。
パク(2口目)、ムシャムシャ、ゴクン。
あれ、食べれる。
なんというか、昔食べた、おれの思うエビの味がしない・・・。
これならいける!
・・・・・・。
全部食べちゃいました。
おれのエビ嫌いを知っていた妹は、おれのエビにありつけず残念がっていました。
しかし、そんなことはどうでもいいんです。
とにかくおれは、なんの問題もなくエビを食べることができたんです。
昔のように吐き気はしませんでした。
なぜだろうと思いました。
理由は2つ考えられます。
一つはおれの味覚が20年で変わっちゃったよ説。
もう一つは、小さい丸いエビと伊勢エビは別物だよ説。
エビそのものの味覚のどの部分をエビの味と称するのか、それは人それぞれによって違うものかもしれない、そうとも思いました。
そして、こう考えました。
もしも、1説のおかげでおれがエビを食べれたのだとすると、おれの食の幅は大きく広がるかもしれない。
かもしれない、です。
なにせ、おれはまだエビを数える程しか食べたことがないわけですからわかりません。
まあそんなわけで、今度エビフライにチャレンジしようと思います。
食べて確かめるんです。
それがクリアできれば次はカップヌードルです。
1説か2説か、これで答えが見つかります。
なんだか楽しみです。