カマキリが、

壁に張り付いて動く気配もなくジッとしていました。
ここ最近の寒さのせいで、身動きがとれなくなったんでしょう。
見ていると、なんとなくかわいそうに思えてきました。
虫が苦手なおれですが、人に無害なものに関しては不思議と慈悲の心が働くのです。
部屋に戻り割り箸を持ってくると、それでカマキリを掴み、緑の多い場所に放しました。
ここで冬を越すのだぞ・・・。
しかし、翌日、そのカマキリはまた同じ壁で固まっていました。
それはもう呆れ果てたんですが、よく考えてみると、このカマキリは壁を登っていたいたわけです。
目指す場所は地面ではなく、より高い場所、やはり、羽を持つ生き物は空へと向かうものなのです・・・。
そう納得したおれは、再び割り箸を持ち出し、カマキリをより高い場所へと移動させるのでした。
クモには気をつけるのだぞ・・・。
だがしかし、翌日、
カマキリは三度あの場所へ・・・。
・・・。
なんとも言えない表情でその横を通り過ぎるおれ・・・。
更に翌日、そこにカマキリの姿はありませんでした・・・。
虫の気持ちなぞ、わかるものか!
おわり。