白いシミになって

私が死んで幾年、今日は命日、家内が毎年花を添えに来る日だ。
私は思うのだ、家内はもう若くないといえども、決してやり直しがきかない歳ではない。
こんな墓に来なくていい、私の事は忘れ、新しい人のもとに行くべきなのだ。
それなのに、今日もここに来るのだろう。
そんな女なのだ。
私に物言う力があれば伝えることが出来るのに。
さて、そろそろ家内がやってくる時間だ。
「あなた、今日はお花はないんですけど、お酒を持ってきたんです。たまにはこういうのもいいでしょう。」
んん?私はお酒を全く飲めないのだが…。
「こうやって、量も少なければ逆にいい薬になるでしょう。」
いや、薬もなにも、私はもう死んでるのだが…、まあ、そのなんとなくずれた気の使い方、変わらないな。
「おーい。」
ん?家内を呼ぶ男の声、まさか、新しい人を見つけ私に紹介するという事なのだろうか。
少々寂しいが私も望んでいた事、祝福しようではないか。
「アナタ、別に来なくていいっていったじゃないの。」
……?
「だってよお、オマエ俺が飲もうとしてたビール持ってっちまうからよお。」
「お墓にちょっとお酒をかけただけだから大丈夫よ。アナタの分はちゃんと残ってるわよ。」
「ちっ、そのちょっとが大事なんじゃねえかよ、オラ、早く酒渡せ、さっさといくぞ。」
……。
「んん?なんだ、この白い模様は?なんか気持ち悪いな。」
「何?まあ、ほんと。バッチイわ。さっさと行きましょ。もう、こんな所二度と来ないわ。それよりも、ホテルよホテル。」
……………あのぉ。

〜白いシミになって〜
私のお墓をちゃんと、掃除してください
そこにあるのはウンコです
鳥かなんかのウンコです
模様じゃない、決して模様じゃない
別に臭いはしません
土にかえる手前

…なんかごめんなさい。